メンタルてちてち

心理系、福祉系の話題が多いです。少しでも皆様に役立つ情報を発信できればと思います。

相模原障害者殺傷事件の植松被告が抱く優生思想の背景は?

 

 2016年、相模原障害者施設において非常に凄惨な事件が起きました。5年以上前の事件ですが、近年稀に見るような凄惨な事件であったため、記憶に新しい人も多いのではないかと思います。

 まず、この事件の概要だけ説明させていただきます。

 この事件は、神奈川県の「津久井やまゆり園」という知的障害者が利用する施設において発生した事件であり、元職員である植松聖(当時26歳)が、入所者19人を殺害、また入所者・職員26人に重軽傷を負わせるという非常に痛ましいものです。

 

 この事件のトリガーとして、被告の持っている「優生思想」というものが起因したと考えられています。では、どのような要素が彼に優生思想を抱かせるに至ったのでしょうか。まずは優生思想について説明を入れ、その後社会情勢についても触れていきながら考えていきたいと思います。

 

 

 

 そもそも、優生思想って何?

 優生思想とは、簡潔に述べると、「身体的・精神的・知的に優れている遺伝子を優遇しよう」というような考えのことです。一見真っ当なようにも思うのですが、この考えが身体的・精神的に優れていない人達への大きなしわ寄せを呼び、差別に結びつきます。

 その思想に基づく政策として、代表的なものがナチスドイツです。ヒトラーは根拠もなく、「優秀な遺伝子はアーリア人が持っている。ユダヤ人の遺伝子は劣っている。」と決めつけることによって、国の差別が助長されてしまい、強制収容所にて大量虐殺が行われるまでに至ったのです。

 

 「優れた遺伝子を優遇し、劣った遺伝子を排除しよう。」

 このような思想が植松被告の中にも確かにあり、年月が経つごとに強くなって事件を起こすまでに至ったのではないかと思います。

 

 2019年の3月に放送されたラジオ番組「差別と平成」にて、植松被告と記者が対話形式で事件について語っています。この植松被告の発言から、彼の中にある優生思想がわかりやすく把握できるのではないかと思います。

 その動画を貼っておきますので、興味のある方は是非ご参照ください。

 

www.youtube.com

 

 日本の経済情勢が彼の優生思想を刺激しているのではないか

 上記のラジオの中では、私が聞いていても沢山気になるポイントがあるのですが、私が気になるのは「障害児の保護者が気の毒である。」というような趣旨の発言をしていることです。

 この気の毒という言葉がどこに焦点を当てているのかを考えてみますと、「子育てに労力がかかること」の他に、「経済的に負担がかかること」というのがあるのではないかと思っています。

 子育ての労力は人によって感じ方、また捉え方が異なりますので割愛します。

 問題は、この「経済的な負担」という点です。皆さんがご存知のように、障害者の年金やサービス利用料は、国民が税金から賄われていますね。具体的に、社会保障費の財源から賄われており、社会保障費は税金全体の4割程度に相当します。

 近年は高齢化が進んでおり、介護保険料や高齢者の医療費などが増大している他、景気の悪化により国債費が大きくなることに起因し、国民の税負担額が年々上昇しています。

 日本の憲法大25条により「全ての人が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と掲げられています。経済的に苦しく、また労働層がどんどん減っていくような状況の中でも、社会的な弱者を救うための政策に手を緩めることがあっては決してならないのです。

 

 このような状況下であることも、「彼らを生かすお金がもったいない。」というような思想に繋がってしまった一要因として考えられるのではないかなと個人的に思っています。

 

 

 優生思想と向き合うこと

 私自身の考えなのですが、きちんと優生思想と向き合おうとし続ける姿勢が、このように最悪の結果を招くことに対する最大の防止策なのではないかと思うのです。

 優生思想は、今の日本にそぐわない思想であり、当然多くの人から反感を買ってしまう思想だと思います。持つ人に対して、反論したり時には強い姿勢で接してまいたくもなるかもしれません。

 しかし、それは逆効果であると思っています。今回の植松被告のように、「こんな社会に一石を投じたい」という「社会」に自分達がなってしまうことで、そのしわ寄せが障害者本人に飛び火しかねないと思うのです。

 どうしてそのように思うのかということをしっかり聞き出したり、障がい者その人自身がもつ素晴らしさを第三者によって伝え続けることが、障害者の権利を保障する上でも有効だと思っています。

 すみません、簡単に申し上げてしまいましたが、当事者やその家族からしたら到底許せることではないですし、目を背けたくなるような思想ですよね。

 そのため、一歩離れて見ている人や専門職の人が根気強くその思想を持っている人と向き合っていく必要性がより高いと言えますね。

 

 

 まとめ

 この先の日本は、高齢化が進み、社会保障費に含まれる医療費が急速に増えていくことから、どんどん国民の税負担が大きくなっていく可能性が高いと思います。

 介護保険料なんかを見ても、20年前後くらいで大幅に上昇しています。

 

 なのであまり考えたくはないけれども、この思想に似たようなものを持つ人がもしかしたら増えていくのかもしれないなあって思う所も正直あります。

 同じ事の繰り返しになってしまうのですが、この思想と向き合い続け、適切な関わり方を見出していくことが障害者の権利を尊重するということに繋がるのではないかという考えを大事にしていきたいなって思います。 

 

 拙いブログではありましたが、ここまでご覧いただきありがとうございました(^^)/